4月18日、東京地裁において宣告された一審判決文全文

4月18日の一審判決で宣告された判決文を掲載します。

判決からブログ掲載までに時間を要してしまったことをお詫びします。

2・9竪川弾圧救援会

2013年4月18日宣告 裁判所書記官 中野知明

2012年刑(わ)第392号

判  決

本籍 -

住所 -

                                                                       フリーター

園良太

1981年6月24日生

上記の者に対する威力業務妨害被告事件について、当裁判所は、検察官河原崎秀公、同和田尚子、四川弁護人川村(主任)、同大口昭彦、同上杉崇子出席の上審理し、次のとおり判決する。

 

主  文

被告人を懲役1年に処する。

この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。

 

理  由

(犯行に至る経緯)

被告人は、東京都江東区竪川河川敷公園内に起居していた路上生活者らを支援していた者であり、平成24年2月9日午後4時過ぎ頃、他の支援者らと共に江東区役所を訪れ、同区が路上生活者のテント等を除却した前日の行政代執行に対して抗議をしていたが、遅くとも同日午後4時30分頃からは、同区役所内の土木部水辺と緑の課の窓口付近において、「江東区役所は人を殴る蹴るしかできない能無し集団です」、「江東区は暴力をやめろ」、「黙ってほしければ荒木を呼べ」、「お前ら5時半で仕事終えたいんだろ」、「早く荒木を出せよ」などと、行政代執行の責任者であった同課課長との面会を繰り返し大声で求めた。そこで、同区役所総務課長は、職員らは通常の業務ができないと判断し、同日午後4時50分頃、江東区庁内管理規則に基づき被告人らに対して退去命令を発した。しかし、被告人は、同退去命令に従わず、カウンターにしがみついてなおも大声を出し続け、更には廊下に寝転がるなどしたため、その両手足を複数の江東区役所職員(以下単に「職員」という。)に抱えられるようにして、同区役所建物内から同区役所2階区民ホール南側通路に退去させられた。

 

(罪となるべき事実)

被告人は、2012年2月9日同日午後4時52分頃から同日午後4時58分頃までの間、東京都江東区東陽4丁目11番28号所在の江東区役所2階区民ホール南側通路において、前記の経緯で退去させられた被告人が再び同建物内に立ち入ることのないよう、通常業務を中断して同建物ドアの前に立ち、被告人の行動を監視・警戒していた同区役所環境清掃部清掃リサイクル課許可・指導係主任主事の貝塚孝夫らに対し、その胸部等に自己の背部等を数回強く押し当てるなどし、さらに、前期区民ホール南側ガラス壁等を数回にわたり蹴るなどして、前期村松及び貝塚らの通常業務の再開を不能ならしめ。もって威力を用いて人の業務を妨害した。

 

(証拠の標目)

括弧内は、証拠等関係カードにおける検察官請求証拠番号を示す。

判示事実全体について

・被告人の公判供述

・第2回公判調書中の証人村松大、同貝塚孝夫、同仁平剛男の各供述部分

・第3回公判調書中の証人荒木猛男、同高垣克好の各供述部分

・実況見分調書(甲1)

・ビデオ解析結果報告書(甲3)

・捜査報告書(甲6)

・資料入手報告書(甲7)

・DVD1枚(甲5)

 

(弁護人の主張に対する判断)

第1 威力業務妨害罪の成否について

1. 弁護人は、職員らは、正当な抗議をしていた被告人らに対して退去命令を発した上、被告人を強制的に排除し、その立ち入りを阻止するために同区役所建物ドアの前に立ちふさがっていたのであり、職員らの一連の職務は、違法な強制力を行使する権力的公務であって、威力業務妨害罪にいう「業務」とはいえないから、判示の「通常業務を中断して」「被告人の行動等を監視・警戒していた」という職員らの業務(以下「監視・警戒業務」という。)に対する威力業務妨害罪は成立しないと主張する。

起訴状のほか、冒頭陳述書に照らせば、検察官は、本件で妨害された対象を、監視・警戒業務それ自体ではなく、同業務の従事により再開が不能となった職員らの通常業務と構成して起訴したことが明らかであり、弁護人の前記主張は必ずしも本件の訴因に即したものとはいえない。もっとも、監視・警戒業務に従事することと通常業務が妨害されることとは表裏の関係に立つというべきであるから、本罪の成否及び犯情を考察するにあたり、監視・警戒業務の性質・内容を無視することも相当とはいい難い。

2. そこで弁護人の前記主張について検討すると、本件では、職員により犯行状況がその前後を含めて比較的明瞭に動画で撮影されており(甲5)、これと関係証拠を統合すれば、判示のとおりの業務妨害行為がなされたことが優に認められる。そして、判示の事実関係、特に退去命令と監視・警戒業務との時間的・場所的な近接性からすると、監視・警戒業務は被告人に対する退去命令を完遂するためのもので、これと一体をなすものであったとみられる。しかし、退去命令が発せられた要因は、被告人が中心をなって大声で面会の強要等を執拗に繰り返して職員らの業務の円滑な遂行を妨げたことにあり、退去命令が発せられた際にも、被告人は、その読み上げ自体を妨害するかのように「江東区は暴力をやめろ」などと大声を上げて抵抗している。その執行に際しても、被告人は、他の支援者らとは異なり、ひとりカウンターにしがみついて怒鳴り続け、廊下に寝転がるなどして抵抗し続けていた。このように、本件当時の被告人の一連の言動と、それが職員らの業務を現に阻害し続けていたとみられる状況に鑑みれば、退去命令を執行するに際し、職員らが被告人に対してある程度の有形力を用いることは庁舎管理上やむを得ないところである。そして、実際の執行状況をみても、職員らは、廊下に寝転がった被告人の両手足を手分けして持ち上げ、抱えるようにして区役所建物外まで退去させたにとどまっている。その直後に取られた対応も、職員らにおいて、退去させられた被告人が再び建物内に立ち入ることのないよう、後ろ手の状態でドアの前で立番するなどしていたにすぎない。

以上のとおり、監視・警戒業務は庁舎管理権の行使として許容される限度内のものであり、これが違法、不当であるなどとは到底いえない。

なお、被告人らに対する退去命令の根拠となった江東区庁舎管理規則は、その執行につき職員に強制力を行使する権限を与える趣旨のものとは解されない。退去命令に引き続いて行われた監視・警戒業務が権力的公務であるとみることはできず、この点に関する弁護人の主張は採用できない。

3. そして、被告人は、区役所建物外に退去させられた直後も、なお大声を上げながら、職員らに対して背中を押し当て、ガラス壁を蹴るなどしていた。その行為は、通常の勤務時間中であった前記村松ら職員をして監視・警戒業務に従事することを余儀なくさせ、通常業務に戻ることを妨害するのに十分な威力ということができるのであり、これが威力業務妨害罪に当たることは明らかである。また、本件当時の被告人の言動や行為時の状況からして、同罪の故意に欠けるところもない。

弁護人は、江東区では行政代執行に関する抗議活動に対応するための警備計画を事前に定めており、本件当日の警備も被告人の行動とは無関係に開始されたものである上,その後,被告人がガラス壁を蹴り破損して器物損壊罪で現行犯逮捕されたため,再び区役所建物に戻ってくる可能性がなくなったにもかかわらず,職員らが引き続き約2時間30分間にわたって監視・警戒の業務を続けていたことなどを理由に,被告人の行為と職員らが通常業務を再開できなかったこととの間には因果関係がない旨主張する。

しかし,威力業務妨害罪は,現に業務妨害の効果が発生することを必要とせず,業務を妨害するに足りる行為の存在をもって成立すると解すべきであるから,弁護人が指摘するような因果関係の問題は存しない。この点を措いても,関係証拠によれば,江東区役所の担当者は,被告人が中心となって面会の強要等を繰り返しているという事態を受けて,職員らの通常業務をいったん中断させて具体的な監視・警戒の業務に就くよう指示したことが認められるから,当日の警備が被告人の行動と無関係に開始されたとはいえない。職員らが被告人の現行犯逮捕後も監視・警戒の業務を継続していたのは,他の支援者らが引き続き抗議をしていたためであり,被告人の行為とは無関係な監視・警戒の業務であったということもできない。

この点に関する弁護人の主張も理由がない。

4. 以上のとおりであるから,被告人には判示のとおりの威力業務妨害罪が成立する。なお,弁護人は,行政代執行の適法性,ひいては被告人が支援していた路上生活者に対する江東区役所の従前の施策・対応の適法性や是非に関して縷々主張・立証しているが,これらに対する評価は威力業務妨害罪の成否とは関連せず,飽くまでも背景事情にとどまるものというべきである。その余の弁護人の主張に,この結論を左右するものは見当たらない。

 

第2 控訴棄却の主張について

弁護人は,①本件の監視・警戒業務は,違法な権力的公務であって,威力業務妨害罪にいう「業務」とはいえず,本件で同罪は成立しないのに,検察官は敢えて同罪で公訴提起をした,②現行犯逮捕の理由となった器物損壊罪事件については,被告人が被害弁償をしたから,検察官は,被告人の身柄を釈放し起訴猶予処分にすべき事案であったのに,路上生活者らを支援する被告人の活動を弾圧するという政治的な悪意に基づいて身柄拘束を継続して公訴提起したなどとして,本件起訴は公訴権の濫用に当たり,本件公訴は棄却されるべきであると主張する。

しかし,①については,本件で威力業務妨害罪が成立することは既に述べたとおりであるし,②についてみても,本件は,業務妨害に態様の悪質性等に照らせば十分な可罰性が肯定できる事案である上,退去命令が発せされた経緯等に照らすと,本件起訴が弁護人の指摘する目的でなされたものとは認められない。

その他,弁論で縷々主張する点を含め,公訴棄却を求める弁護人の主張は理由がない。

 

(法令の適用)

被告人の判示行為は,刑法234条,233条に該当するところ,その情状をみると,判示の一連の言動は周囲の迷惑を顧みない悪質なものであり,被告人は公判でも自己の正当性を主張する態度に終始しているが,前科のないことなどに鑑み,所定刑中懲役刑を選択し,被告人を懲役1年に処してその刑事責任を明確にした上,刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。

よって,主文のとおり判決する。

(求刑 懲役1年)

平成25年4月18日

  東京地方裁判所刑事第4部

裁判長裁判官  大野 勝則

   裁判官  北村  和

   裁判官  須田 健嗣

これは謄本である。

同日同庁

裁判所書記官 中野 知明

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